長法寺・時の蔵 / 菊間の自然と地域の記録

客神社の社叢
― 菊間・西山に受け継がれる森 ―

今治市菊間町西山の客神社には、境内とその周囲に約3,840㎡の森があります。神社を囲むこの社叢(しゃそう)は、愛媛県の天然記念物です。木々が伝える地域の自然と、公的資料に残る人々の営みをたどります。

西山の客神社と県指定の森

愛媛県の文化財資料によると、客神社の社叢は1970年(昭和45年)3月27日に、県指定天然記念物(植物)に指定されました。所在地は今治市菊間町西山、所有者欄には西山部落と記されています。指定対象は境内とその周辺の社叢であり、社殿などの建物全体を対象とする指定ではありません。[1]

約3,840㎡に重なる木々と植物

県の解説は、社叢が小さな川に両側を挟まれた丘陵の突端にあり、背後は山につながると説明しています。アカガシやツブラジイの大木のほか、ヤブツバキ、モッコク、サカキ、ヒサカキなどが挙げられ、林床にはセンリョウ、ヤブコウジ、シダ類も記されています。これらは県資料に載る植物名であり、今回、現地で確認した植物の一覧ではありません。[1]

社叢が伝える地域の自然環境

県は、この林を暖温帯常緑広葉樹林として解説し、地域の自然植生の極相林(きょくそうりん)の状況をよく示すと評価しています。大木と低い植物の両方に目を向けると、地域の自然を知る手掛かりになります。ただし、すべての木の樹齢や現在の植生、長期間伐採されなかったかどうかまでは、この解説だけで確定できません。[1]

神社と地域の人々

愛媛県神社庁は、客神社の主祭神を伊邪那岐命・伊邪那美命とし、由緒は未詳、1876年(明治9年)に村社に列格したと記しています。この列格年は、創建年を示すものではありません。[2]

西山部落の弓祈祷は、1983年(昭和58年)3月19日に今治市の無形民俗文化財に指定されました。森の天然記念物指定とは別の文化財です。[3]

地域の習わしを伝える加茂神社の公開記録には、西山の四地区が交代で祭りを担うことや、矢を持ち帰って魔除けとすることが紹介されています。この記録の掲載年と現在の実施状況は未確認のため、現在の祭りの運営を示す資料としては扱っていません。[4]

2023年度の環境整備の記録

愛媛県『令和5年度主要施策の成果説明書』59頁の「文化財保存顕彰事業」には、天然記念物「客神社の社叢」の環境整備が掲載されています。令和5年度(2023年度)の事業主体は西山部落(今治市)、事業費は4,999千円(499万9千円)、補助金は1,666千円(166万6千円)です。[5]

この表から、地域の組織が近年の保全事業を担ったことを確認できます。当該表の事業内容は「環境整備」と記されており、具体的な作業は明記されていません。日常の手入れや指定以前の管理の経緯も、この表だけでは分かりません。事業費は、この環境整備の費用であり、森の管理全体の年間経費ではありません。

森を次の世代へ

ここからは、長法寺・時の蔵としての考察です。社叢の記録を残すことは、植物の名前を並べるだけでなく、地域の人々が神社と森にどのように関わってきたかを確かめることでもあります。

これから現地の植物や景観を記録し、管理に関わる文書や、地域の方々の話を照合していけば、森を受け継ぐ仕事をより具体的に伝えられるでしょう。確認できた年代と、語り継がれてきた話を分けながら、次の世代がたどれる記録を残していきたいと考えています。

これから確かめたいこと

客神社の創建年代と社名の由来、指定区域の詳しい境界、植生の最新状況、2023年度の作業内容、指定以前の維持管理史は、追加調査が必要です。『菊間町誌』の該当本文も未照合のため、同書をこの記事の由緒の確定根拠にはしていません。

参考資料と出典

[1]愛媛県「客神社の社叢」 指定内容、面積、立地、植生。

[2]愛媛県神社庁「客神社」 祭神と社歴。由緒未詳との記載。

[3]今治市「菊間地域の文化財」 社叢と弓祈祷の指定一覧。

[4]加茂神社「客神社で行われる弓祭りの説明」 地域の祭りの公開記録。記事の年は未確認。

[5]愛媛県『令和5年度主要施策の成果説明書』59頁 「文化財保存顕彰事業」の令和5年度実施状況。

資料確認日:2026年10月11日。文化財と保全事業は公的記録、祭りの習わしは公開された地域の記録、次世代への提案は編集上の考察として記しました。

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